中国語学習法
初級学習者向けの実戦的な中国語教育
同じ内容の文章でも、違う人が書けば全く違った書き方になる。それと同じように、学習の方法論も人それぞれ、教育方法論も人それぞれである。私はその中で 100 万人の中国語の教育メソッドを薦めている。
100 万人の中国語のメソッドは心弦社の田中則明先生がチャイナワークで連載しているコラム「100 万人の中国語」のページでほぼ全貌が公開されている。
この教育メソッドは実戦的だ。相手を倒すことが実戦カラテであり、寸止めや型を重要視するカラテとはその目的が異なるように、心弦社の教育メソッドは「通じる」ことが大前提である。細かい理屈や理解は後からついてくるのである。
一般的には中国語の声調は四声と軽声の 5 種類なのだが、中国語教育、あるいは学者の世界では、半三声という声調もあるらしい。また軽声はその前の文字の声調によって高さが変わる。しかし、これらは初級学習者にとっては「理論的に記憶する」よりも「会話文の中から自然に身につける」ことが重要である。というのも、初級学習者に細かいことを色々と詰め込んでも「理解が追いつかない」からだ。ある程度できるようになってから理屈が理解できる、これで全然遅くはない。
辛いことを乗り越えることに美徳を感じるような勉強法は長く続かない。中国語ができなくても生活は困らないし、死ぬこともない。のであれば、楽しみながら、きちんと身につけることが一番大切なことだと思う。
入門コースの頃
私が 100 万人の中国語入門コースに受講した頃は、電車で移動するときには必ずテキストに附属しているテープ(今は CD になっている)を聞いていた。とにかくテキストを見ながらテープを聞く。何度も聞くことで会話文のリズムがなんとなく感じられるようになる。必ずしも記憶することに執着する必要は無く、とにかくピンインを見ながら聞くようにした。そして、一日一回は四声、母音、子音の組み合わせが 19 単語掲載されている 26 ページの音読をした。26 ページの内容は「100 万人の中国語 その 30」に掲載されている。これが正しい発音で読めることが入門コースの修了の基準である。
また、入門コースの授業が終ると毎回のように中国人の働くスナックで復習をした。もっとも、これは学習意欲というよりは趣味の世界である。とはいえ、ネイティブに発音を矯正してもらう機会ができるのだからそれなりに意味がある。酒を飲んでいる時は記憶力が低下するので勉強と呼べるものではないが、発音を矯正してもらうと意外とその部分はしっかり記憶に残る。また自分が発音する機会を増やす、というのが大切なことだ。
中国人の働くタイレストランや中華レストランにも友人と良く食事に行った。「结帐(jié zhàng :お勘定)」なんて言って、店員が「まだ料理ありますよ」なんて答えたら「吃饱了(chī bǎo le :おなかいっぱい)」なんて言ってみる。とりあえず知っている言葉は何でも言ってみた。その答えがわからなくても気にせず。
フォローアップコースの頃
入門コースが終ると引き続きフォローアップコース(現在の初級コース)に参加した。この頃からだんだんと自分の記憶力の悪さが気になりだしてきた。なかなか記憶できない。元々英語の成績が悪かったのも抜群に低い記憶力からだ。数学なんかは、解法の流れを覚えれば良いので記憶しやすかったが、語学の暗記能力ときたら全然だめだった。
記憶力が悪い場合の対処は二通りある。無理して記憶しようと考えないこと。同じことを繰り返して時間をかけて覚えること。この二つである。プレッシャーとして受けとめてしまうのは、ますます記憶力を低下させるように思う。
この時期に田中先生から受けたアドバイスは「CD と同じタイミングで一緒に発音すること」である。CD のスピードに慣れることも重要な要素だが、CD の後について発音するよりも圧倒的に中国語がリズムとして定着しやすいのである。
この頃から時折、中国語の辞書を引いて遊ぶようになった。読み方のわからない単語があると、書虫のページにあるピンイン変換サービスを利用してピンインを調べ、その後で小学館の日中/中日統合辞典(PC 用電子辞書)を利用して意味を調べる。
会話の勉強をする上で特に効果的なのは日中辞典の方だ。会話の練習では、中国語でどのように表現するかを調べる事が多い。「辞書はぶ厚い良いものを」というのが田中先生も日々言われていることである。
この頃やってみたのは、DVD で映画を見ることである。ジャッキー・チェンやサモ・ハン、ユン・ピョウが出演しているような映画の DVD はレンタル店にも置いてあるし、ものによっては北京語音声、簡体字字幕が入っているものがある。DVD は音声や字幕の切り換えが簡単にできるので、ちょっとした言葉などは覚えることができる。しかし、映像の印象が強くて CD 教材と比較すると有効性は低いだろう。初級学習者にとっては何もしないよりはやった方がマシ、というレベルの学習法だ。おそらく中級者と呼べるレベルの人には非常に効果ある学習法だと思う。
中華書店発行の「新中国語1」という教科書がある。これは「私の中国語入門」で書いた、会社にいた女性からもらったものだ。この本は由緒ある参考書なのだが、中国に語学留学している外国人に教えるための教材だけあって「你是留学生吗?(nǐ shì liú xué shēng ma :あなたは留学生ですか?)」なんていう実用的とは言いきれない文例が多くすぐに飽きてしまった。この教科書は 100 万人の中国語講座受講前はなかなか進まなかったのが、この当時試しにやってみたら 10 課まで一気に進んでしまった。自分のレベルが向上していることを実感として得ることができた。つまらないと感じたテキストでも自分の成長具合を確認するために使うという方法があるようだ。
文法の学習
基本的な文法に興味が出てきたのは、フォローアップコースに入ってしばらくしてからである。「一」や「不」の声調変化をきちんと理解したい、という欲求からだった。普通の中国語のテキストでは「一」は全て yī、「不」は全て bù と記述されるのだが、100 万人で使われるテキストは全て「発音の通り」に記述されている。それを一旦理屈で覚えておこうと思ったのである。
初級レベルで繰り返し勉強していると、中級レベルになったときに文法や文型が重要になってくることがわかる。自分が声を出した所で完結してしまうレベル、つまり「吃饱了」や「结帐」というような「言えば用件が済む」レベルから、「他人と会話する」レベルに入るにはどうしても必要だ。
ネット検索して文法書の書評を読んだり、内山書店や東方書店などの中国語教材の多い書店で実物を眺めたりして購入した文法解説書は以下の三冊である。
初級学習者向けの文法書であれば、どの文法書でも内容はさほどかわらない。しかし、言葉は時代を反映し成長を続けるものなのでなるべく新しいものが良いと思う。一番の選択基準は「ほとんど全てピンインが振られていること」である。まだ漢字を見てピンインが浮かぶほどのレベルに到達していない、しかも時間が多く取れない人は、辞書を引くために使う時間をどれだけ少なくできるか、ということは重要なポイントである。ピンイン付きであればすぐに辞書を引くことができるが、ピンインがわからない場合は画数や部首から引かざるを得ないため非常に時間がかかる。
「中国語文法の基礎」は本がそれほど重くないので持ち運びに適しているし、「WHY に答えるはじめての中国語の文法書」と「トレーニングペーパー」はドリル形式になっており、
「勉強した気分」を味わうことができる。
中国語の学習が進んできたら 100 万人の中国語で使われている二冊のテキストと併用して文法書を読んでみることをおすすめする。文法書を読んで、100 万人の講座の内容を理屈として理解することもできるし、100 万人では出てこないけれど有用な表現も沢山含まれている。さらに一歩進むためには、このように積極的にとりあえず手を出してみることも大切なことだ。
積極的になろう
語学は、その言葉を母国語とする人達と交流するための道具である。文化や思想を知るための道具である。だからこそ、外国へ行かなくとも積極的に交流する機会を見つけよう。友達を作ろう。中国語を使う機会を作ろう。
授業を受ければ中国語を使う機会はできる。しかし、自分自身で消化して定着させるには、自分の意思でそれを使うことだ。ぜひ、中国人の友達を作って色々な話をして欲しい。日本語が混ざっても良いと思う。出身地のこと、家族のこと、住んでいた家のこと、趣味の話…、100 万人の中国語入門コースを修了した人なら、どんなことでも中国語を交えて会話することができるはずなのだ。
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